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After Effectsの新機能 「VRコンバーター」の謎に迫る

 

After Effects CC 2018の新機能

2017秋に、Adobe PhotoshopやPremiere Pro、AfterEffectsの360関連機能が強化されました。今回の強化では、Premiere ProとAfterEffectsの双方に、基本的には同じ名称のエフェクトが追加されています。しかし、AfterEffectsにはあるけれど、Premiere Proにはないエフェクトもあります。

その1つが、今回紹介する「VRコンバーター」というエフェクトです。

なぜVRコンバーターが気になるか?

私は、KODAK SP3604Kで撮影することが多いです。編集ワークフローは、KODAK純正のソフトで正距円筒図法に射影変換して、それをPremiereで読み込んでいます。

ただ、KODAK純正のソフトの仕様がイマイチで、複数ファイルを一括で処理することが出来ず、ファイル数が多いときには非常に煩わしいのです。

なので、Adobe製品群の方で射影変換できれば、ワークフローが改善されるのではないかと期待しました。

VRコンバーターの仕様が分からない

VRコンバーターエフェクトを適用してみると、以下のような画面が現れます。入力と出力の射影方式を指定すると、その通りに変換されるという、シンプルなUIです。

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ここで、魚眼レンズから正距円筒図法に変換しようとした時、厄介なことがあります。それは、魚眼レンズの射影方式です。

実は、魚眼レンズと一言でいってしまいがちですが、射影方式という観点で見たとき、複数の種類があります。正しい射影方式を指定しないと、射影変換後に画像が歪んでしまいます。

各射影方式における、入射角に対する像の大きさ(像高)を下図に示します。正射影、等距離射影、立体射影、等立体角射影というのが、魚眼レンズの射影方式です。

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魚眼レンズの射影方式によって、入射角に対する像の大きさ(像高)は、このように違ってきます。ですので、射影方式を正しく指定しないと、正距円筒図法にした時に像が歪んでしまうのです。

ちなみに、いわゆる普通のレンズというのが、中心射影になります。中心射影は原理上、入射角が90度を超えることが出来ないので、魚眼レンズには適用できません。

VRコンバーターにおける「魚眼レンズ」の射影方式

魚眼レンズの射影方式の重要性がわかったところで、VRコンバーターの「魚眼レンズ」がどの射影方式を指すのか、検証してみます。

検証方法は色々と考えられますが、今回は以下の方法を取りました。

  1. 5degピッチの等緯度線を描いた、正距円筒図法の図を用意
  2. VRコンバーターで、「正距円筒→魚眼レンズ」の変換を実施
  3. 魚眼レンズの緯線のピッチを測定

というわえで、用意したのが以下の正距円筒図法の図になります。

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これをVRコンバーターで画角180°の魚眼レンズに変換した所、以下のような結果となりました。

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緯線が見事に等ピッチで並んでいますね。ということは、VRコンバーターの「魚眼レンズ」の定義は、等距離射影だと言うことがいえます。

まとめ

VRコンバーターの「魚眼レンズ」の定義は、等距離射影だと言うことが分かりました。ところで、世の中に存在する魚眼レンズは、等距離射影でないものも多いです。ちなみに、主だったレンズ交換式の魚眼レンズの射影方式は、以下のようになっているようです。

  • SIGMA 4.5mm F2.8 EX DC CIRCULAR FISHEYE HSM:等立体角射影
  • SIGMA 8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE:等立体角射影
  • Nikon AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED:等立体角射影
  • Nikon AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED:等立体角射影
  • Nikon AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D:不記載
  • Canon EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM:不記載
  • Samyang 8mm F3.5 UMC FISH-EYE CS II:不記載
  • Samyang 8mm F2.8 UMC FISH-EYE II:不記載
  • Samyang 7.5mm F3.5 FISH-EYE:不記載

これら、立体射影ではないレンズで撮った画像は、VRコンバーターで正距円筒図法に変換した場合、結果がおかしくなってしまうので、注意が必要だと思われます。